- 検索結果がありません。
海辺で上半身を脱ぐこと
手術後にいちばんしたいことをうかがうと、大それたことを書かれる方はほとんどいません。6月に女性化乳房の手術を受けられたある方は、このように書いてくださいました。「プール、ウォーターパーク、海辺などで上半身を脱ぐこと」。
他の人にとってはただの夏の風景ですが、長く悩んでこられた方にとっては毎年避けてきた場です。
この方は手術を決めるまでに心配したことを並べてくださいました。痛み、日常生活、回復の過程、手術後の変化。「ためらわれる部分が多かったけれど、余計な心配だった」。
診察室でも同じです。一つが大きく引っかかって来られないのではなく、小さな心配がいくつも重なって決断をためらわせるのです。相談ですることの半分は、その心配を一つずつ出していただき、それぞれにお答えすることです。ただし回復の過程と痛みの程度には人によって差がありますので、この方の経験がすべての方にそのまま当てはまると申し上げるのは難しいのです。

初めて来院されたときの印象として、この方はこう書いてくださいました。「プライバシーを先に気遣った感じ。楽だった」。
意図して構成した部分なので、挙げてくださったことがうれしく思われました。男性の体型の悩みは、話を切り出すことからが敷居です。待合の動線と相談室の配置、診療の順序を、その敷居を下げる方向で組んでいます。楽にお話しいただけてこそ状態を正確に把握でき、正確に把握できてこそ手術計画がきちんと立ちます。
手術中に記憶に残った瞬間としては、手術の計画と予想される変化についての説明を聞いたこと、そして手術を終えたあとに計画どおり進んだという話を聞いて安心したことを書いてくださいました。
説明は手術前の診察室で差し上げ、結果は手術を終えたあとにお伝えします。手術室で患者さまと会話が交わされることはありません。麻酔は麻酔科の医療陣が担当し、私は麻酔が終わったあとに入ります。
計画をあらかじめ共有する理由は、結果をお約束するためではなく、何を基準に見るかを一緒に決めておくためです。基準があれば、回復の過程で生じる変化が正常の範囲なのかを患者さまご自身も推し量ることができます。
この方は最後に、思ったより大したことではなかったと書いてくださいました。同じ悩みを抱えていらっしゃる方であれば、診察を通してご自身の状態をまず確認してみられるほうがよいです。この夏、水辺での一日が軽やかであったことを願っています。
