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その一言で怖さが消えたとおっしゃいました
手術を前にしていちばん重いのは痛みではなく、失敗したらどうしようという思いです。この方もそうでした。「手術が失敗するのではないかと心配が多かったです」。最初の欄に書かれた一文です。
この方が病院について記憶されたのは三つでした。清潔な空間、相談を担当したスタッフ、そして看護チーム。
女性化乳房で来られる方は、たいてい長く一人で悩んでから来られます。ですから最初の数分が重要です。診療が始まる前に気持ちが決まってしまう場合が少なくないからです。

この方がもっともはっきり記憶された瞬間は、手術台に入る直前でした。心配しないでください、うまくいくし、すぐ終わりますという言葉を聞かれたそうです。「その言葉で怖さが消えました」。
患者さまとお話しする時間は、診察室と手術直前の準備段階です。執刀医は麻酔が終わったあとに手術室へ入りますので、私は手術を終えたあと、回復の過程で経過をお伝えします。この方が記憶されているその一言は、手術を控えた場で出たものです。
手術後にしたいこととして、この方は二つを書かれました。「着てみたい服を思いきり着たいし、プールでもどこでも遊びに行きたいです」。
夏のたびに先延ばしにしてきたことです。服の内側の事情のせいで行ける場所が減っていく経験は、この手術を受けられる方が共通しておっしゃる部分です。
同じ悩みを抱えていらっしゃる方々へ、この方は一人で悩み続けるより、来院して相談を受けてみてくださいと書いてくださいました。相談がすなわち手術ではありません。ご自身の状態が手術を要する程度なのかどうかを確認する場であり、そうではないという答えを聞いて帰られる方もいらっしゃいます。
最後の欄には、手術前に心配が多かったけれどよくしてもらって感謝しているという言葉を残してくださいました。心配が多かったぶん、長く安らかであられることを願っています。
